…ここは兎潟(うさがた)県土井中(どいなか)市。

ローカル私鉄がゴトゴト走り、観光シーズンに温泉客でにぎわっている以外は、

何の変哲もない…ない…のかな…ないんじゃないかな、多分。

まぁちょっと覚悟はしておけ…。

 

ここ、県立土井中高校農業部…。

今日も新しい野菜の研究開発をすべく、部長の高麗川ケイスケは張り切っていた。

ケイスケ「おい、みんな。ちょっと聞いてくれ!」

「なんだァ?」頭をかきむしりながら曳舟タツヤが答える。

「また害虫でも出たの?」と、おっとりした様子の椎名町ミズキ。

 

ケイスケ「実は、他のどんな野菜にも絶対負けない野菜を作るため…」

ミズキ「ほぅほぅ」

ケイスケ「新アイテム今週の超(スーパー)・ビックリドッキリ肥料が完成したのだァーッ!!」

部員一同「おぉ〜〜〜ッ!」

 

しかしケイスケは知らなかった。

これが新たな事件を引き起こしてしまうことを…。

 

かっ飛び!ピョン丸くん

〜第2話:ドキッ!巨大ニンジンでダイコン乱!?〜

 

翌日、高円寺家…

カズミ「じゃ、今日は鉄研の活動があるから、いってきまーっす!!」

スグル「おぅ、気をつけろよ〜」

カズミはお気に入りのカメラと最新版の大型時刻表を引っさげて、

ダッシュで土井中温泉駅に向かうのであった。

そう、今回は鉄道研究会の集まりでNR兎潟線(うさがたせん)の上擬古(かみぎこ)電車区へ向かうというのである。

 

妹を見送ったスグル。だが、その目に飛び込んできたのは…。

スグル「?…カズミーッ!!弁当忘れてるぞーッ!!!」

だが鉄道のことで頭がいっぱいのカズミに聞こえるはずもなかった。

ピョン丸「ん?どうしタンダスグル、大声なんか出しテ」

スグル「ピョン丸、悪いがこの弁当をカズミに届けてやってくれ」

ピョン丸「OK!エンジン全開…かっ飛ばして行くゼッ!!」

そう言うなりピョン丸は背中のジェット・スラスターを噴かしてカズミの元に向かおうとした。

だが、次の瞬間…

 

カズミ「いやぁぁぁぁっ!何アレェェェェェ!!!」

ピョン丸「…わぁぁぁ!?バカ、こっちはジェット噴かしてンダゾ、来るナ!来るナッテ…」

カズミが先に待機していた部員数名とともに全速力で戻ってきて…

同じく全速力だったピョン丸にぶつかった。

…この場合普通は人間側が吹き飛ばされそうなものだが…。

ピョン丸「ぶべらッ!!」

何故かピョン丸の方が飛ばされた。

 

スグル「一体何があったんだよ?」

カズミ「あ…あ…」

カズミは恐怖に引きつっていた。何かを指差しているらしいが指先が震えている。

最初は何のことやらよく判らなかったスグルだが、カズミが指差している方向に目をやった次の瞬間である。

スグル「何じゃこりゃぁぁっ!!」

 

そこにあったのは謎のオレンジ色の物体だった。

山を突き破り、駅舎の一部が潰れていた。

そのとき、スグルの部屋の中からラジオの音が聞こえてきた。

 

「…臨時ニュースです。突如この温泉街に出現した謎の巨大物体は…」

スグル「おぃおぃ、なんだか大事になってないか?」

その時、スグルの肩を叩く人影が…。

 

ケイスケ・タツヤ・ミズキ「しょぼ〜〜〜〜〜〜ん…」

スグル「…もしかして…お前ら…」

ケイスケ「すまん、我々は新しい野菜の研究をしていたのだが、実験に失敗してしまったのだ」

カズミ「実験って…?」

タツヤ「今週の超(スーパー)・ビックリドッキリ肥料』の実験だよ。肥料の分量を間違ったらしくて…」

スグル「じゃあアレはなんだ?」

ミズキ「えと…ニンジン…です」

 

ピョン丸「何だっテェェェェェェェェッ!?」

スグル「わ、お前いきなり大声で叫ぶなって、こっちがビックリしたぞ!」

ピョン丸「そ、それは本当なノカ、キバヤシ!?」

一瞬わけのわからないことを言うピョン丸。

しかしピョン丸以上に驚いていたのは土井中高農業部と温泉中鉄研部の部員達だった。

ケイスケ「な、何者だこの変てこなロボットは…」

ピョン丸「ヘ、変てこって何なんダヨ失礼ダナ!」

スグル「あぁ、こいつはウサギ型ロボットのピョン丸。訳アリで俺ん家で暮らしてるのさ。

…そんなことよりどーすんだよ、あのニンジン」

 

それはゆうに30mはあろうかという巨大なものだった。

あのニンジンを一刻も早く何とかしなければならなかった。

このままでは土井中温泉の存亡に関わる(かもしれない)事態だったからだ。

 

その時、ピョン丸がとんでもない言葉を口にした!

ピョン丸「よし、わかッタ。食っちまおうゼ!」

一同「なにィー――――ッ!?」

ピョン丸「だから、食っちまうンダヨ、あのバカでっかいニンジンをナ」

タツヤ「で、でもよぉ、どうやって食いつぶすんだよ。この町の住民が何人いても足りないって」

ミズキ「自衛隊呼ぶって手もあるんですけど、まさかニンジン片付けてくれなんて言えないですしねぇ…」

スグル「う〜む…それが問題だ…」

 

カズミ「お兄ちゃん、大丈夫だよ!」

スグル「何が?」

カズミ「ピョン丸くんがいるじゃない!」

スグル「…そ、そうかっ!!」

スグルは思い出した。初めてピョン丸と遭遇した時のことを。

ピョン丸はゆうに5人前はあったオムライスを30秒で平らげてしまっていた。

ヤツの食い気なら…あの巨大ニンジンに勝てる!

スグル「よし、決まった!ニンジン殲滅作戦を敢行する!!」

 

巨大ニンジンの前…作戦決行の時は刻一刻と迫っていた。

スグル「いいか、3・2・1でニンジンに対して攻撃を仕掛けるんだ!」

ケイスケ「ああ、わかっている…これは我々の責任だ、このまま放って置く訳にも行くまい」

スグル「それじゃ行くぜ!」

ピョン丸「オウ!」

スグル「3…2…1…GO!!」

 

戦いのゴングが鳴り響いた。

スグルは流石料理部出身というだけあり、目にも止まらぬ包丁捌きでニンジンを切り刻んでいく。

ピョン丸「おのれ化物メ、ニンジンの分際でこのピョン丸にケンカを売った事を…後悔させてヤルゼ――ッ!!」

ピョン丸はニンジンに飛びついた。すべてのエネルギーを込めてニンジンに飛びついた。

そして僅か1分も経たぬうちにニンジンの3/4を食い占めてしまっていたのだ。

だがその時、地響きが鳴り、残りの1/4がずり落ちていた…!

 

ケイスケ「いかん!あの先は!?」

カズミ「どうしたの!?」

ケイスケ「君達にはアレが見えんのか!」

 

そこには、巨大ニンジンの影響で不通となった土井中電鉄の代行バスが走っていた。

だが、このままニンジンが落下すればバスが下敷きになる…。

たかがニンジンで犠牲者を出すわけにも行かない。

ニンジン殲滅部隊は焦りを感じていた。

 

ピョン丸「オイラが行って来ル!」

タツヤ「バカ、やめろ!!お前まで下敷きに!!」

ミズキ「そうですよ、危険すぎますよ!」

ピョン丸「大丈夫ダ…だってオイラ、ロボットだからナ」

 

ピョン丸は走った。ニンジンを食い止めるため急いで丘の下に走った。

そして大きく口を開け…。

 

次の瞬間ピョン丸は落下していたニンジンを一気に丸飲みした。

 

スグル「…ていうか、俺らの見せ場ほとんど無かったな…」

カズミ「まぁまぁ、結果オーライでしょ」

ケイスケ「さぁて、それでは我々はここいらで」

スグル「…っと、ちょっと待て」

農業部一同「?」

 

スグル「お前ら全員正座しろ!説教だッ!!」

…怒り心頭のスグルなのであった。

 

なにはともあれ、こうして土井中温泉の平和は守られた。

だが事件はいつ、どんな形で起こるかわからない!

がんばれ!ピョン丸!!


…というわけで第2話をご覧頂きましたが、

ここでまた謎のキャラクターたちが出現です。

しかし、そんなに野菜が巨大化する肥料って、一体なんなんでしょう?

 

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