…ここは兎潟(うさがた)県土井中(どいなか)市。

ローカル私鉄がゴトゴト走り、観光シーズンに温泉客でにぎわっている田舎町。

時々突拍子も無い事件が起こるけれど、

それさえ気にしなければ普通の温泉街なのだ…それさえ気にしなければ。

 

ただ、この町が抱えている問題が一つ。

それは海外旅行ブームによって、観光客が少しずつ減っていることだった…。

それを受けてか、土井中高校の各部活動は新たな名物を作ろうと考えていた…。

 

かっ飛び!ピョン丸くん

〜第3話:温泉復活計画!新名物で大作戦!〜

 

土井中高校、家庭科室…

料理部の部長であるスグルは部員達に演説ともいえそうな話をしていた。

スグル「…つーワケで、この高校に通っているみんなもわかってると思うが…

この土井中温泉はいま窮地に立たされている!」

「そんなオーバーな…」市ヶ谷タイチが答える。

スグル「オーバーなもんか。例え僅かな差でも、ちりも積もればなんとやら!ここでやらなきゃ男が廃るってモンだろ?」

「ちりも積もればってアンタな…」突っ込みを入れる荻窪シンジ。

「まぁ要するに、名物料理を生み出せば観光客が戻ってくるって話でしょ?」飯田橋ナナセがスグルの話をきれいに纏め上げた。

スグル「まぁ、そんなトコだな」

タイチ「でも別に料理じゃなくてもいいんじゃねえの?」

 

スグル「うっ…すっかり盲点だったぜ!!」

シンジ「お前何でんかんでん言って自分が料理作りたかっただけだろ…」

図星だった。

 

タイチ「でも料理するにしても具体的にどんなものを作るつもりなんだ?」

ナナセ「そうそう、それが問題だよね」

名物作りの会議は進む。

温泉饅頭…温泉卵…。

ありきたりじゃつまらない、かといって突飛過ぎるのも客が引いてしまう…。

会議は最終下校時間まで毎日続いた。

 

そんなある日、高円寺家…。

スグル「…というわけで、今回は俺の部屋で会議だ。ガンプラばかりで少々見苦しいかもしれねえが、座っていってくれ」

といいつつ、手作りハンバーグを部員達に配っていくスグル。

タイチ「しっかし、ここ数週間会議してるのにアイデアが行き詰まってるってのがどうもなァ」

シンジ「別に無理して料理にこだわる必要もないんじゃないか?」

会議はさらに続く…。

カズミ「ねぇねぇ、みんな揃って何話してるの?」

ピョン丸「そうダヨ、何やってンダオマエラ」

スグル「…あぁ、実はこの土井中温泉の新しい名物を作ろうと思ってさ」

カズミ「なぁんだお兄ちゃん、それなら手っ取り早い方法があるじゃない!」

ナナセ「手っ取り早い方法?」

タイチ「なんだそりゃ?」

 

カズミは1枚のイラストを取り出した…。

カズミ「ジャーン!土井中電鉄にトロッコ電車を走らせるのよ!!」

 

シンジ「…お前もお前でただ自分が乗りたいだけだろ」

カズミ「ギクッ!」

…兄妹揃って何やってんだか。

 

そして川沿いの山に場所を移し、さらに会議は続いていたが…。

ピョン丸「あー、なんダヨなんダヨ、他にいいアイデアはないノカ?これじゃ先が思いやられるゼ…」

スグル「な、何だと!?」

タイチ「じゃあお前は何かアイデア持ってきてんのか!?あ?」

ピョン丸「フッ、落ち着けっテ…オイラは…」

自信ありそうな顔のピョン丸。

緊張した眼差しで見つめる部員達…。

 

ピョン丸「って、オイラ引っ越してきたばかりで何にも知らなかったンダッタ!!」

一気にズッコケる一同。

台無しである。

 

スグル「チョット待てピョン丸ぅ!それじゃ意味ねぇだろうが!?」

ピョン丸「仕方ねぇダロ、そんな簡単にホイホイと思いつけるかッテバ!!」

スグル「かちゃましい!ゴタゴタ言ってると炎の中に投げ込むぞ!!」

すぐさま言い争いが起こった。

「大分困っているようだな」どこかで聞いた声が…。

 

ケイスケ「どうだ、我々農業部が新しい野菜を作って売り出すというのは?」

一瞬、空気が張り詰める。みんなは黙り込んでしまった。

その静寂を破ったのはナナセだった。

ナナセ「お断りします」

ケイスケ「一瞬!?」

スグル「だってお前らの農業研究はほとんど怪実験に近いしなぁ…」

全くだ…。

 

ピョン丸「…だぁぁぁぁッ!何にもアイデアが思いつかネェ、こうなりゃ八つ当たりダッ!!」

タイチ「お、おいバカ、落ち着け!落ち着けって!!」

ピョン丸は右腕をドリルに変形させ、穴を掘り出した。

意味はないけれど、ムシャクシャしたから、ひたすらに穴を掘り出した。

しかしアイデアが出ないのは紛れもない事実であった。

誰もが諦めかけていたその時だった。

 

ピョン丸「ん?…どわァァァァッ!?」

ピョン丸が地面の下に落下した…。

シンジ「な、なんだ…どうなってやがる!?」

タツヤ「とにかく下に降りるぞ!」

スグル「まぁ、ヤツはロボットだから大丈夫だろうけど…助けに行かなくちゃな!!」

カズミ「そんだったらこのロープを使うといいよ!」

 

ピョン丸が落ちた穴の中…。

スグル「しっかし、結構深いな」

ナナセ「ねぇ、一体どこまで続いてるのかなァ」

ミズキ「お…オバケとか…出ません…よね?」

シンジ「何言ってんだ、出るわけないだろうが。それともお前ビビリか?」

ミズキ「だ、だってぇぇぇ〜〜〜」

などと会話をしていると、目の前に光るものが見えた。

 

だがそれはゆらりと揺らめき…

動き出したかと思うと……

スグルたちのほうに向かってくる……!!

 

ミズキ「で、出たぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

タイチ「ややや、やっぱり…来るんじゃなかったんだこんな所!!」

カズミ「お、お助けぇっ!!ナンマイダナンマイダ…」

ケイスケ「お、おのれ妖怪め!成敗してくれる!!」

みんな口々に悲鳴を上げるが、光の主は少しずつ近付いてくる。

俺たちはこのままこの得体の知れない物体に襲われてしまうのか?

不安で胸がいっぱいになったその時、光の主から声がした。

 

ピョン丸「よ、ミンナ!オイラだッテ、オイラ!」

スグル「…紛らわしいんだよテメーは!」

ピョン丸「痛テッ!?」

スグルは近くにあった石をピョン丸に投げつけたのだった…。

 

ピョン丸「イテテテ…何すんダヨォ…」

ケイスケ「明らかにお前のせいだと思うが?」

カズミ「それじゃああの緑色の光の正体は…」

スグル「あぁ、コイツのパワーランプだったってワケだ。…で、お前は一体何やってるんだピョン丸」

ピョン丸「あ…そうダ、こんなのを見つけたんダケドナ…」

タイチ「暗くて何も見えんぜ?」

ピョン丸「よしちょっと待っててクレ…サーチライト作動!!」

 

ピョン丸の目が光り出し、周囲を明るく照らし出した。

ふと見ると、そこには洞窟が広がっていた…。

そしてその中には…温泉が湧き出ていた。

 

タツヤ「やった!名物どころか新名所を発見しちまったぜ俺たち!!」

シンジ「けどよぉ、入れるかどうか判らないぜ?まだ温度も測ってないし、成分だって…」

ピョン丸「そういうことなら問題ないゼ。ここの温泉は単純ナトリウム泉、

温度も測ってみタガ43℃でほどよい湯加減だと思ウゾ…ちょっと手を加えてやれば観光客の人気も集まるかもナ」

スグル「おし、でかした!ピョン丸!」

タイチ「それでは新名所の発見を祝いましてー!」

タイチはジュースを取り出した…。

ケイスケ「っていつの間にこんなものを持っていたのだ、お前は!?」

タイチ「あぁ、俺ジュース好きだからよく買い置きしては持ってきてるんだよ」

カズミ「準備いいんだかちゃっかりしてるんだか…」

スグル「ともあれこの新名所の発見を祝って、乾杯っ!」

一同「かんぱーい!!」

 

…こうしてこの土井中温泉に新たな新名所が生まれた。

洞窟のある場所は川のすぐ近くということもあって、川が見渡せるように窓があけられ、

通路や脱衣所なども整備され、「洞窟風呂」として観光客の注目を集めたのである。

 

その記念すべき入浴客第1号は、他でもない第一発見者のピョン丸たちだった。

ピョン丸「ふぅ…生き返るゼ…」

スグル「お前ね、ロボットがそういうこと言っちゃうか、普通?」

ピョン丸「ロボットでも気持ちいいものは気持ちいいんダヨ…あ、アレ…急に頭が…」

スグル「…?」

さっきまで気持ち良さそうにお湯に使っていたピョン丸の様子が変だ。

不思議に思ったスグルが尋ねてみた。

すると返ってきた答えは…。

 

ピョン丸「ヤ…ヤベェ…長湯に…つかりすぎて…オーバーヒート……」


…というわけで第3話です。

名物は作れなかったけど、もっと凄いものを見つけちゃいました。

まさに奇跡発見な感じの物語ですが、

ピョン丸はどうやらのぼせてしまったようです(笑)。

 

さて第4話予告。

300km/h空を飛べるのに着地がヘタクソなピョン丸。

見るに見かねたスグルが、ピョン丸に試練を与えます!

乞うご期待!!

 

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