…ここは兎潟(うさがた)県土井中(どいなか)市。

ローカル私鉄がゴトゴト走り、観光シーズンに温泉客でにぎわっている田舎町。

その中にある高円寺家では、またもとんでもないことが起こっていた。

いきなり轟音と共に玄関が吹き飛んだのだ。

 

スグル「こぉらピョン丸、またドアぶち破ったなァ!」

ピョン丸「着地が上手く出来なくてサァ…」

スグル「300km/hで空を飛べるロボットが着地が出来なくてどうするッ!!」

スグルはピョン丸の耳を掴み引きずり出した。

ピョン丸「イテテテテテテ!み、耳はヤメロ耳はッ!!マジ痛いカラ!!」

スグル「だぁらっしゃぃ!来いッ、マトモに着地が出来るようになるまで猛特訓じゃあ!!」

 

かっ飛び!ピョン丸くん

〜第4話:立つんだピョン丸!炎の猛特訓!〜

 

温泉公園…。

スグルは片手に何故か竹刀を持ちピョン丸の特訓をはじめたのであった。

 

スグル「あー、というわけでェ。これからお前に着地の特訓を行なう!」

ピョン丸「……」

スグル「着地をするにあたってまず一番重要なのはァ、そう、バランスだ!」

ピョン丸「……」

スグル「そこでまずはバランス感覚を身に付けてもらうワケだが…」

ピョン丸「Zzzzzz…」

 

スグル「寝るなァッ!!!」

ピョン丸「あべしッ!!」

スグルは持っていた竹刀でピョン丸を叩いた。

スグル「とにかくまずはバランスが肝心だ。ピョン丸、この平均台を渡ってみろ!」

ピョン丸「わかったヨ、渡ればいいんダロ、渡れバ…」

さっきまで寝ていたせいか、半ば面倒そうに平均台に登るピョン丸。

そしてピョン丸は足を進めていく。

1歩、2歩、3歩…。

 

6歩目に突入したその時だった。

ピョン丸「おっと…トォッ!?」

ピョン丸はバランスを崩して平均台から落下した。

 

スグル「やれやれ、それっぽっちかよ…せめて半分くらいは渡れないと飛行タイプとしては務まらないな」

ピョン丸「…もう一度ダ…!もう一度行ってヤルッ!!」

途端にやる気を出し始めるピョン丸。再び平均台に上りバランスを鍛えていく。

上がっては落ち、落ちては立ち上がってまた上り、そして落ち。

 

いつしかピョン丸は、余裕で平均台を往復できるまでになっていた。

ピョン丸「ハァ…ハァ…200往復…達成…!」

スグル「よし、今度はロープを渡ってみろ」

ピョン丸「…フッ、もういくら細くなっても大丈夫…」

 

だがスグルはタダでロープを渡す気はなかったようだ。

ロープが掛けられていたのはなんと近くを流れる間足川(またりがわ)渓谷だった。

 

ピョン丸「…こ、殺す気カ?」

スグル「どうした?もう楽勝なんじゃないのか?」

ピョン丸「……」

しばし黙り込んだ後、

ピョン丸「チクショー!行きゃぁいいんダロ、行きゃぁヨォ!!」

ピョン丸は歯を食いしばり、悔し涙を流しながら危険な綱渡りに挑むのであった。

 

そこへ料理部の連中が現れた。

シンジ「スーグルッ、何やってんだよ?」

スグル「見りゃ判るだろ?ピョン丸を特訓してんだ」

タイチ「特訓だって?」

 

スグルはなぜピョン丸を特訓しているのか、そのいきさつを語った。

シンジ「おっしゃ!俺も協力するぜ!」

ナナセ「あたしも!」

タイチ「俺も!」

こうして一気に特訓は加速する…。

 

そんな中ピョン丸は渓谷にかけられたロープを錘を背負って渡れるまでになっていた。

ピョン丸「…つ、次は一体…何なんダ…?」

シンジ「次はそうだな…バンジージャンプでも…」

スグル「いや、ここは急降下から実際に着地を…」

ピョン丸「…おーい?」

みんな次のメニューを考えるので必死であった。

その時である。

 

「うわぁ〜!助けてぇ〜!!」

悲鳴が聞こえてきた。近くの小学生と思われる。

見ると渓谷の下の岩場に男の子が取り残されているではないか。

どうやら近くの川で友達といかだを作って競争しようとしていたところ、

操作を誤って急流に飲まれ、岩場に取り残されてしまったらしい。

取り残された子の友達は、どうすることも出来ずただオロオロと様子を見ているばかりだった。

一瞬、緊張が走った。

 

タイチ「ヤバイぜ、このままじゃ大変なことになるぞ!」

スグル「どうする、レスキュー隊を呼ぶか!?」

ナナセ「そうだよ、誰か大人の人を呼んでこないと…」

シンジ「そんな時間があると思うのか!?」

シンジの言うことは少なからず正論といえた。

岩場は激流によって濡れており、

レスキュー隊を呼んでいる間に男の子が流されてしまう可能性もあるのだ。

あの激流に打たれ続けて、男の子の体力もかなり消耗している様子なのでなおの事だ。

 

ピョン丸「オイラが助けに行クゼ!」

タイチ「ば、馬鹿かお前は!着地もマトモに出来ない奴が飛び降りたところでどうにもなるわけがないだろ!」

シンジ「じゃぁどうする!このままじゃあの子が流されてしまうぞ!」

ナナセ「でも…ピョン丸くんはまだ…」

 

スグル「やらせてやろう」

一同「えっ!?」

スグル「アイツはいつもそうだ、やると言ったらもう何も聞かねぇ。『思い込んだら命懸け』だからな、アイツは…」

どっかの特撮のオープニング歌詞のワンフレーズのような事をつぶやいた後、

スグルは大手を振って叫んだ。

スグル「…よし、行けピョン丸!あの男の子を救出するんだ!」

ピョン丸「オウ!!」

 

ピョン丸は助走をつけて崖っぷちから大きくジャンプした。

部員達は期待と不安でいっぱいだった。

もしもあの岩場に辿り着ければ、あの子は助かる。

だがもし、ピョン丸が着地に失敗すれば…。

もはや祈るより他にはなかった。

 

頼む、ちゃんと着地してくれ。

しっかりと着地して、あの子を助けてやってくれ。

 

その時奇跡は起こった。

ピョン丸は2回、いや、3回身体を回転させた後…

見事水面に着地したのである。

 

スグル「ちゃ…着地した…!」

シンジ「やったぜピョン丸!」

特訓の成果は今ここに実ったのである。

 

ピョン丸「…これからは、川で遊ぶ時には気をつけるンダゾ」

「ありがとう、ロボットの兄ちゃん!」

「ありがとう!」

子供達はピョン丸にお礼を言うと、元気に家路に着いた。

スグル「……やったな、ピョン丸。やれば出来るじゃねえか」

ピョン丸「ああ…オイラ、やったヨ。着地に成功したンダ」

シンジ「それにしても…自分の身も省みず飛び込んだお前って、結構かっこよかったな」

ナナセ「そうそう、なんかスーパーロボットみたいだったよ」

タイチ「『ロボットの兄ちゃん』だってね、このこの!」

ピョン丸「エヘヘ…」

こうしてピョン丸は、自分自身が抱えていた最大の弱点をどうにか克服したのである。

 

後日、ピョン丸は消防隊から「勇気ある小さなロボット」として表彰されたという…。


第4話、楽しんでいただけたでしょうか。

着地がヘタクソなピョン丸でしたが、ついにその弱点を克服しました!

これでようやくウサギ型ロボットとしての面目も果たせたのではないでしょうか?

 

さて、第5話ではカズミの想い出の電車にまつわるエピソードを紹介する予定ですが、

ちょっと鉄道ファン向けな話になるかもしれません(滝汗)。

まぁ、ゆるゆるっとお待ちを。

 

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