ピョン丸「なんダ、コリャ?」

カズミ「あ、そうか…ピョン丸くんはロボットだから知らないんだよね」

一体何を話しているのだろうか。

その答えはカズミが持っていた1枚の写真にあった。

 

かっ飛び!ピョン丸くん

〜第5話:走れ!想い出色の電車!〜

 

この写真の内容に着いてピョン丸が尋ねたところ、カズミはゆっくりと語り始めた。

カズミ「これはね…あたしのおじいちゃんがよく乗せてくれた電車なんだ。

お兄ちゃんも一緒に乗ったけど、窓を思いっきり開けて帽子飛ばされちゃったんだって」

ピョン丸「ダハハ、カッコ悪…」

 

スグル「だぁれがカッコ悪いってぇ?」

ピョン丸「ヒッ!?き、聞いてたノカッ…!?」

カズミ「あ、お兄ちゃん帰ってたの?」

スグル「帰ってたのじゃねぇよ、恥ずかしい事話すんじゃねえ!」

ピョン丸「顔真っ赤ダナ、スグル…」

どうやらスグルにとっては思い出したくない話だったようだ…。

 

スグル「まぁ、この電車は結構好きだけどな…モハ76ってヤツ?」

ピョン丸「『モハ76』……モハって、なんダ?」

ピョン丸は最新鋭のロボットであるがゆえ、まだまだわからないことがあるようだ。

 

カズミ「モハっていうのは、電車の種類を表す言葉なんだよ。

たとえばこの写真のモハっていうのはモーターがついてて自分で走っていけるから『モハ』。

これに対して運転席はあるけどモーターがついてないのが『クハ』、

運転席もモーターもないのが『サハ』っていうんだって」

スグル「鉄道の話させたらキリがないんだからな、カズミは…」

ピョン丸「…スグルはガンダムにうるさいケドナ…」

スグル「うっ…ま、まぁとにかく、カズミの言ったように電車にはいろんな種類があるってことだよ」

やっぱり図星を突かれたスグルであった。

 

そんな思い出話に花が咲く中、カズミは買ったばかりの鉄道情報誌を読んでいた…。

だがそこに書かれていたのは驚くべき記事であった。

 

『最後のツリカケ電車 モハ76号引退』

記事によれば、土井中電鉄のモハ76号は老朽化のために引退することが決まったというのだ。

この記事に驚いたのは他でもないカズミだった。

 

カズミ「そ…そんな、ウソだ…」

スグル「あの電車がどうかしたのか?」

カズミ「お兄ちゃん…あの電車が…なくなっちゃうんだって」

スグル「なんだって!?」

 

ちょうど高円寺家のチャイムがなる。

駆け込んできたのは鉄道研究会のリーダー、新橋テツヤと大月カンナ、石和カイジだった。

テツヤ「カズミ聞いたか!?モハ76が引退するらしいぞ!!」

カズミ「う、うん…あたしも『鉄道ヤキトリアル』の記事で見たもん」

カンナ「あの電車好きだったのになぁ…」

みんな残念がっているようだ。

カイジ「…まぁいちばんの古株だったからな、引退も仕方ないだろうな」

ピョン丸「まぁ、新型に代わるからそれでOKなんじゃないか?どうせあれももうボロボロなんだし」

と、ピョン丸が他人事のように話に割り込む。

それを引き止めたのはスグルだった。

スグル「あーのーな、雰囲気を台無しにするようなこと言うんじゃない。

確かにあれはお前からしてみりゃ古い電車かもしれないけど…あの電車はなぁ…」

カズミ「ピョン丸くんのバカァ!!」

スグルの言葉はカズミによってさえぎられた。

ピョン丸「…!?」

カズミ「あの電車はあたしの宝物なんだよ、思い出の詰まった、宝物なんだから…!」

スグル「カ、カズミ…?」

 

カズミ「ごめんね、大声出して…やっぱりピョン丸くんは新型のロボットだから…わからないか…」

ピョン丸「……な、泣くことないダロ、そんな…………」

カイジ「お前…、お前は自分が何を言ったかわかってるのかよ!!」

テツヤ「落ち着けカイジ!相手は最新型のロボットだ…なんにも知らないんだぞ」

カイジ「でも…あの電車はカズミの思い出が詰まってるんだ、それをあのウサギロボは…」

 

ピョン丸「……ゴメン、カズミ……オイラ、オマエの気持ちもわからずに酷い事言っちゃっタナ…」

カズミ「ピョン丸くん……」

ピョン丸「……決めタゼカズミ、みんなであの電車を走らせるンダ!」

スグル「しょ、正気か!?……」

カンナ「もう既に決まったことなのよ?今更あたしたちがどうこうできる問題じゃないわ!?」

カイジ「そうだ、なんにも知らないお前が出て行っても無茶なだけだ!!」

ピョン丸「でもこのままじゃ、カズミの大切な思い出が…」

 

テツヤ「……やってみよう」

テツヤの言葉にみな耳を疑った。

テツヤ「今からでも、間に合うはずだ…。一人一人は小さいけれど、力をあわせればきっと望みは叶うはずだ。

地元の人たちや鉄道ファンにも懸けあってみよう。何もしないで後悔するより精一杯、出来るだけやってみよう」

ピョン丸「……」

カイジ「やれやれ、とんだ野郎だ。どこまでもついていくぜ、ロコ!」

カンナ「ロコ、あたしもやってみるよ!」

カズミ「何もしないより動かなきゃ、ね?」

ロコとは、テツヤのあだ名である。

テツヤは鉄道研究会のリーダーで、統率力がある。

つまり、みんなを引っ張っていくのが得意なのだ。

その姿がまるで機関車…つまり、ロコモティブのように感じられた。

これこそが彼のあだ名の由来となっているのである。

 

スグル「何?…俺、出る幕なし?」

 

さっそく署名運動が開始された。

しかし街を行く人々は見向きもしない。

馬鹿馬鹿しい、という目で見られもした。

 

そんな中…。

地元の住民A「失礼、この署名なんだけど…いいかな?」

地元の住民B「あの電車がなくなるのは嫌だからなぁ…投票させてもらえんかね」

電車を残そうという地元の住民が署名に応じてくれたのである。

 

一方、土井中電鉄に乗り込んだテツヤは、同社の職員である中村と話をしていた…。

テツヤ「…どうでしょうか、なんとか存続できませんでしょうか?」

中村「う〜む…とはいっても、あの電車も相当の高齢だからねえ…

あれだけの古株はどうしようもないね…」

テツヤ「そんな…そこをなんとか……」

 

しばしの沈黙が続いた。

確かにモハ76号はたくさんの人を、思い出を乗せて走ってきた。

ガタガタ揺れてうるさいけれど、新型電車にも負けない魅力があった…。

しかし、流石に老朽化しているのと、冷房が付いていないなどの要因が折り重なり、

会社としても存続は難しいだろうと判断されていたのである。

 

しかし中村は、静かに立ち上がると、まるで人生最大の賭けをするかのような口調でこう語った。

中村「わかりました。やれるだけのことはやってみましょう。

上の方々とも話し合って、存続するかどうかを検討してみます」

テツヤ「…ありがとうございます」

2人はかたい握手を交わした。

 

一方、街の集会所では、モハ76号存続を訴える地元住民らが会議を続けていた…

カイジ「…で、あるからして…」

そのときだった。『機関車』がみんなの前に現れた。

テツヤ「たった今、土井中電鉄の人と交渉をしてまいりました。存続の方向で、再検討してくださるとのことです」

 

拍手が上がった。会場内は拍手でいっぱいになり、この瞬間…

全てが動いたような気がした。

 

…そして数ヵ月後。

土井中電鉄、土井中検車区にて…。

 

そこにはピカピカに磨き上げられたモハ76号が停車していた。

そう、モハ76号は地元の有志がボランティアで保存運転することが決まったのだ。

この日はその保存運転に向けた車輛整備完了の記念式典だった。

 

カズミ「今回は、土井中電鉄のみなさん、それに地元のみなさんのおかげで、

モハ76号が元気に走り回る姿をこれからも見ることが出来るようになりました。

…こうして成功を収めました今回のプロジェクトですが…」

一瞬の沈黙…。

カズミ「ピョン丸くんが思いついていなければ、モハ76の走る姿はもう見られなくなっていたことでしょう」

カズミが紹介したのは…ピョン丸であった。

「みんなで電車を走らせよう」

思い返せば、ピョン丸があの言葉を発しなければ、モハ76は廃車になっていたかもしれないのだ。

 

スグル「…よかったじゃねぇか、あの電車を残してくれることになって」

ピョン丸「カズミのヤツ、嬉しそうダナァ…今度はオイラも乗ってみたいゼ!」

 

モハ76はこれからも、みんなの思い出を乗せて、走り続けてくれることだろう…。


第5話、楽しんでいただけたでしょうか。

今回は思いっきり鉄道話です。よって展開上ドタバタは少なめです。

モハ76号を巡る動きに少々ご都合主義的な部分もありますが、

その辺はご愛嬌ということで(w

 

さて、第6話では、ピョン丸のライバルが登場する予定。

 

『ピョン丸』初めてのバトル展開になりそうな予感。

(諸元表に武器の表記があったのはもしかしてそのため!?)

まぁ、ゆるゆるっとお待ちを。

 

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