兎潟県・土井中市…その中心街、土井中温泉駅前通り。

この駅前通りから北へ延びるこしあん通りとの交差点の近く…

『カレーの店STEP』で、食料がなくなる事件が発生した。

 

この事態を重くみた『HT-723RS・ナツミ』は、犯人を発見すべく監視カメラを食料庫に設置。

ナツミはスグル・ピョン丸とともに、監視カメラの映像を睨んでいた…。

 

と、その時!カメラは驚愕の決定的瞬間を捕らえていた!!

スグル・ナツミ「あぁーっ!こ、これは一体――――――!!?」

 

かっ飛び!ピョン丸くん

〜第9話:カレー屋を救え!ドタバタ捕り物帖(後編)〜

 

その犯人は意外なものだった。

薄暗い食料庫。その片隅に置いてある大量のジャガイモ…。

それを食い荒らしているのは…なんと巨大なイモムシのような生物だった!

 

スグル「おいおい、イモムシにしちゃぁでか過ぎるぞ!なんかの間違いじゃないのか?」

ナツミ「うわっチクショウ!盗まれたんじゃなくて食されてたのか!!」

スグル「何はともあれあいつを追っ払わないとまずいな…」

ピョン丸「大きさからして殺虫剤は効かなさそうダシナァ…」

 

その時、ナツミのバールがピョン丸の頭上を僅かにかすめた!

ピョン丸「あ…危ねぇナ!何すんダヨ!!」

ナツミ「食料庫で殺虫剤なんて使えるわけないでしょっ!!」

…正論だ。

スグル「しかし殺虫剤が使えんとなりゃ、直接乗り込んで追い払うしかないぞ?」

ナツミ「まぁ…確かにね。ちょっと食料庫に行ってみるか…」

 

食料庫…

スグル「いたぞ…アレか!」

そこには平然とジャガイモを食べ続けるイモムシがいた。

スグル「どうやら気付いて無さそうだな…隙を突いて突入するぞ」

ピョン丸「オ、オウ!」

緊張が走る。3人はそろりと扉の近くに移動し、一気に身構えた。

ナツミ「それじゃ、カウントダウンお願いね」

スグル「よし…3、2、1…ゼロ!」

一同「突入!!」

 

食料を食い荒らす巨大イモムシを食い止めるべく突入が開始された。

先陣を切って飛び込んでいったのは我らがピョン丸だ。

ピョン丸「デェェェェェェェェイッ!!」

勢いよくかけ声をあげてイモムシめがけ突進する!

ところが…。

ピョン丸「ウワァッ!つ、掴まっちまったヨォ!!」

スグル・ナツミ「どしぇ〜ッ!!」

あろうことか、ピョン丸がイモムシに捕らえられてしまった!

イモムシは大層ゴキゲンな様子でピョン丸の背中のエネルギープラグ付近に身体を回りこませていく…。

そしてアゴをエネルギープラグに押し付けると…

ピョン丸「う…うワァァァァァァッ…クソッ…エネルギーが……!!」

なんとピョン丸の体内に流れる電気エネルギーを吸い始めたのである!!

 

ナツミ「あぁっ!こ、コイツはまさか!!」

と、ナツミが突然何かを思い出したかのように叫んだ。

スグル「一体どうしたってんだ!?」

ナツミ「…コイツ…怪獣『スラモ』だわ!」

 

今回の怪獣図鑑「スラモ」

山間に生息するガの一種が、突然変異を起こし巨大化したもの。

幼虫は植物や電気エネルギーを好み、野菜の貯蔵されている食料庫や高圧電流の流れる送電線を襲う。

かつて、このスラモの大量発生により兎潟県南部が停電する事態に陥った事例がある。

 

そうこうしている間にスラモはピョン丸の電気エネルギーを全て吸い尽くしてしまった。

スグル「ピョン丸!?おい、しっかりしろ!ピョン丸!!」

ピョン丸「……」

ナツミ「へんじがない。ただのしかばねのようだ」

スグル「縁起でもないこと言うんじゃないよアンタは…」

なんと言うことだろう。

ピョン丸は電気エネルギーを全て吸い尽くされ、機能停止に陥ってしまったのだ。

これは、この小説始まって以来の大ピンチか!?

…と、その時突然スラモが糸を吐き始めたではないか。

スグル「まさかスラモのヤツ…ココで羽化するつもりか!?」

ナツミ「冗談じゃない!そんなもん呼んだ覚えはない!頼むから消えてくれ…!」

どんなに叫んでも時すでに遅し、食料庫には巨大な繭が張られてしまった。

スグルは急いでピョン丸の充電を開始した…。

 

そして数時間後、日没も間際の頃である。

ピョン丸「アレ…オ、オイラは一体…!?」

低い起動音が響き、ピョン丸が目を覚ました…。

スグル「全て吸い尽くされてたんだ…怪獣『スラモ』にな…」

ピョン丸「…?それじゃオイラ、今の今まで停まってたってことなノカ!?」

スグル「……まぁ、そうなるな」

 

すると突然ピョン丸は泣き出した。

ピョン丸「ゴメン…せっかく約束したのに…オイラ…何にも守れなかっタ……」

何もできなかった悔しさ。

果たせなかった約束。

そして今、思い知らされた自分の無力さにピョン丸は打ちひしがれていた…。

 

するとピョン丸の頭にナツミがそっと手を置いた…。

ナツミ「ううん、ピョン丸くんは悪くないよ」

ピョン丸「エ…?」

ナツミ「だって、精一杯頑張ってくれたじゃない。一番真っ先に飛び込んだあの背中、かっこ良かったよ」

ピョン丸「で、でも……オイラは結局…」

スグル「泣くんじゃねぇよ、ピョン丸……お前は立派なロボットじゃねぇか」

ナツミ「そうだよ、それにピョン丸くんは男の子でしょ?自分を責めるなんて、らしくないよ。ね?」

ピョン丸「…スグル…ナツミ……!アリガトウ…オイラ今度こそ負けないゼ!!」

スグル「そうこなくちゃ!それでこそピョン丸だぜ!!」

と、なにやら青春していたその時である。

STEPの屋根から成虫となったスラモが出てきたのだ。

スグル「まぁ…結局羽化されちゃったけどな…」

ナツミ「まぁ…野菜は何とか買いに行けば店は続けられるけどね。ピョン丸がスラモを見つけてくれなかったら今頃どうなってたか…」

スグル「まぁ何はともあれ、ピョン丸のお陰で一件落着だな」

ピョン丸「そ、そうカナ…」

ピョン丸はちょっと照れていた。夕日の赤が、ますますそれを強調していた。

そんなピョン丸たちを尻目に、スラモは大きな翼を広げはるか彼方へと飛び去っていった…。

 

と、その時であった。

リュウ「高円寺!高円寺はいるかぁ!?」

リュウを筆頭とする技術部の面々がやってきたのだ。一体何故だろうか?

スグル「…?なんだお前らか、何しにきた一体?」

シンイチ「いや、実はスラモの人工孵化実験に成功したんだけどな…」

トラ「その直後に幼虫が逃げだしちゃったんです…」

リュウ「まぁ、とりあえず孵化はできたという事でそのまま放置しておいたのだがな!ハッハッハッハ…」

ナツミ「そのおかげでこっちは被害が出てるわけだけれども?

その手にはバールを持ち、ナツミの顔は引きつっていた。

リュウ「……ま、まぁ、その、なんだ…実験に犠牲は付き物だという事で…一つ穏便に…」

 

ナツミ「マクロの空の彼方まで飛んで逝けっ!!!」

哀れ、リュウはバールにより遥か遠くへと殴り飛ばされたのであった。

ナツミ、逆転サヨナラホームラン。

スグル・ピョン丸「………」

 

スグル「……帰るか?」

ピョン丸「そうダナ…」


はい、というわけで第9話も無事完結しました。

怪獣出現でピョン丸が大ピンチに陥る…という話でしたが、

ストーリーの組み立てが難しいのなんのって。

 

最後のオチは案外簡単に思いついたんですがね。

ナツミといえばバール、バールと言えばナツミですもの、

今回は寧ろナツミがメインになってたと思います。

 

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