それはいつもの朝。いつものように朝食の支度をするスグル。

いつものように材料が不足し、いつものようにスグルはピョン丸に声をかける。

スグル「おーい、ピョン丸!悪いけどハム買ってきてくれねぇか?」

ピョン丸「OK!任せとけッテ!!」

いつものように何気なく過ぎ去っていく朝。

そう、そんないつものような一日に…なるはずだった。

 

かっ飛び!ピョン丸くん

〜第13話:ピンチ!ピョン丸絶体絶命!?〜

 

ピョン丸は元気に飛び出していった。目指すは駅前通りに程近い商店街。

頼まれたハムを買うために、小銭をしっかり握りしめて。

ピョン丸「…っと、肉屋はこっちダナ…」

ピョン丸が向きを変えようとしたそのときだった。

ピョン丸「ア……!?」

突然ピョン丸は動きが鈍ったかと思うと次の瞬間、その場に勢い良く倒れこんでしまった。

一体何が起こったのか?

 

???「…こちら捕獲班、ターゲットを補足した」

???「ご苦労、搬送の準備にかかれ」

???「了解!」

 

スグル「……遅いなピョン丸のヤツ…いったいどうしたんだ?」

カズミ「まさか…ピョン丸くんに何かあったんじゃ…」

スグル「縁起でもないこと言うんじゃねえよ、まさかあいつに限ってあんなことは…」

と、待ちくたびれていた兄妹のもとに、紙飛行機が飛んできた。

中には文字が書いてある。どうやら手紙のようだ。

スグル「どれどれ…『唐突にこんな手紙を送ることとなって申し訳無いが、現在ピョン丸は我々が預かっている』…?」

カズミ「『今日中にはそちらに返すつもりなので安心してくれたまえ』…?」

スグル「この変な文体は…間違いないな、アイツらまたか…」

……一体誰がピョン丸を拉致したのか?

聡明なる読者の方々なら大方想像はつくだろう。

 

一方のピョン丸は…

ピョン丸「う…ここは……そうダ、オイラはスグルに頼まれてハムを買いに……」

なにやら薄暗いところで目を覚ました様子のピョン丸。一瞬状況が把握できなかった様子だが…。

ピョン丸「そうダ!こんなとこでボサっとしてる場合じゃネェ!はやくハムを…!」

ピョン丸は慌てふためき立ち上がろうとする。が、しかし…

ピョン丸「…ア、アレ?…ど、どうなってンダ!?身体が…」

腕を動かし上体を起こすことは出来たが、肝心の足が動かない。

???「気付いたかね、ピョン丸くんとやら」

ピョン丸「そ、その声はまさか!?」

ピョン丸「お、オマエラ…オイラをこんな薄暗いところに閉じ込めて…一体どうしようってンダ!?」

リュウ「まぁ待て、ではまずお前に質問を出そう。我々は何者か…それに答えてくれるか?」

ピョン丸「何者…って、技術部の連中じゃネェカ、さっさと元に戻せヨ!」

リュウ「まぁ落ち着け。…その通り、我々は技術部…つまり技術を研究したりする部活だ」

ピョン丸「…で?」

リュウ「そしてピョン丸、お前はロボットだ。我々は新時代の技術、特にロボットに興味があってなぁ…」

ピョン丸「何が言いたいンダ…!?」

シンイチ「ま、つまりお前さんは俺たちにとって格好の研究材料というわけだな!」

その瞬間、ピョン丸の周りの空気が凍った。

ピョン丸「…い、今……何て……?」

トラ「はーい!ピョン丸くんはこれから私達の実験台になってもらいまーす!」

 

ピョン丸「ふっざけんじゃネェーッ!!誰が実験台なんかに…!」

リュウ「無駄だ、お前が眠っている間に機体制御用の回路を少しばかり弄らせてもらったからな、身体を動かすことは出来んさ」

ピョン丸「…くっ…クッソ…」

シンイチ「さぁて、どっからバラそうかな?」

トラ「やっぱりお腹からこう…レーザーカッターでバッサリと?」

ピョン丸「いっ…レ、レーザ……!?」

リュウ「いや!やはりここは丸ノコで一刀両断と…」

ピョン丸「丸ノコ……!?い、一刀……両断……って!?」

シンイチ「やっぱり地道にドライバーとスパナで目立つところから分解していくとかな♪」

ピョン丸「あ……あうあうあう………」

ピョン丸の表情が引きつり、その口からはただ、言葉にならない悲鳴が漏れるばかり。

明らかに恐怖に怯えている様子だった。

 

リュウ「よぉし、このまま一気にガスバーナーで焼き切るか!」

ピョン丸「ウワ何をって、ちょ、嫌だァァァァァ!!」

トラ「大丈夫大丈夫、すぐ終わりますから☆」

ピョン丸「それって終わる頃にはオイラ死んでるじゃネェカッ!!!」

シンイチ「ま、人類の未来のために一つハデにさ」

ピョン丸「単にオマエラの道楽のためダロ!?オイラの未来はどうなるノサ!?」

リュウ「そんなん知らん」

ピョン丸「ウワァァァ!やめっ…助けッ…!死にたくネェヨォォ!!」

 

ピョン丸は死の恐怖に怯えていた。

目の前にちらつくガスバーナーの炎。このまま解体され鉄クズになってしまうのか?

どこかの海の上に埋め立てられてしまうのか?ピョン丸がもうダメかと思ったそのときである。

 

スグル「ピョン丸ーーーーーーーーーーー!!」

 

静寂を破りスグルが単身乗り込んできたのだ。

リュウ「あ…!?こ…高円寺か、これはどうも」

スグル「貴様ァ…ピョン丸に何をしようとした…!?」

リュウ「あ、いや…これは…その…、まぁ、アレだ、なんだ…」

必死で誤魔化そうとするリュウ。それを責め立てるスグル。

その瞬間、ピョン丸が滝のように涙を流しながら呟いた。

ピョン丸「コイツラ…オイラを分解するって…グスッ…」

スグル「ほう……?」

トラ「あわわわわわわわ……!」

シンイチ「ま、まずいことになったぞ…」

リュウ「えぇぃ、あと一歩だったのに…」

するとピョン丸がスグルの方を向きながら言った。

ピョン丸「スグル…そこに制御装置がアル…!それをオイラに向かって投げてクレッ!!」

と、スグルの横にはなにやら電子部品の塊があった。

先ほどリュウによって外された、ピョン丸の身体に本来あるべき部品。

スグル「そ、そうか!よぉし…ピョン丸!受け取れぇぇぇぇっ!!」

スグルは制御装置を掴み、ピョン丸に向かって投げた。

ピョン丸は渾身の力を振り絞り制御装置を受け取ると、すかさず自分の身体に組み込んだ。

そして…

 

ピョン丸「ヨッシャァァァッ!ピョン丸、ただいま復活ダゼッ!!」

技術部一同「うそーん!?」

ピョン丸「テメェラ…よくも散々弄んでくれやがって…」

ピョン丸の目は涙で潤み、拳は震え、顔は引きつり…しかしその形相は悪魔の如きものであった。

抑圧の代償ほど、大きく怖いものは無かった。

 

ピョン丸「オイラがどんだけツラい思いをさせられたか〜〜〜〜〜〜!!!!!」

技術部一同「ギャァァァァァァァァァァッ!!」

ピョン丸のアッパーカットが技術部に炸裂した。

 

翌日、カレーの店『STEP』…

ナツミ「あ、いらっしゃい!」

スグル「お…ナツミさん、やってるな。早速だけど『STEPカレー』頼むよ」

ナツミ「毎度っ!…あれ、ピョン丸くん…なんか元気ないね?」

スグル「それがな、昨日の事件で物凄いトラウマ抱えちゃったみたいでな…」

ピョン丸「ヒック…グスッ……分解…切断……うっぅぅ…グスッ…」

スグル「もうここんとこずっとこの調子なんだ」

ナツミ「あら……」


と、いうわけで第13話でした。

今回は一応ドタバタギャグのつもりです。

いやぁ、それにしても、イジメって怖いですねぇ(笑)

ピョン丸もさぞやトラウマ抱えたことでしょう。

まぁアレだ、調子に乗って他人をイジってると仕返しされてひどい目にあうよって教訓ですな。

 

さてさて次回は、久しぶりに鉄道研究会が登場。

土井中電鉄の名物、除雪列車が登場する…かも?かも…!?

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