ここは兎潟県・土井中市。ローカル私鉄がゆったり走り、
時々とんでもない事件が起こるけれど、そこさえ除けば普通の温泉街。
そんな街にも当然冬がくる。冬がくれば雪は降り、温泉で身体を温めるため観光客が各地からやってくるのだ。
そんな冬のある日のこと、ここ『カレーの店STEP』では、
カズミと鉄道研究会がなにやら話をしていた。
カズミ「ねぇみんな、冬の風物詩って何だと思う?」
カンナ「風物詩ねぇ…雪とかじゃありきたりすぎるし、温泉もなんかパターンだしねぇ…」
ナツミ「何話してるの?」
カズミ「冬の風物詩についてちょっとね…ロコはどう思う?」
テツヤ「俺か?…そりゃぁやっぱ…」
テツヤ「この時期といったらやっぱキの100だろ」
カズミ「あー、キの100!そういやいたね、土井中にも」
カンナ「昔はたくさんいたんだけどねぇ」
テツヤ「そいつを押すのが荷物電車のモニ91だからさ」
カンナ「おぉっ、吊り掛け!やっぱり旧型車はたまんないよね〜」
ナツミ「あの……なんかその、話題についてけないんだけど……」
かっ飛び!ピョン丸くん
〜第14話:ピョン丸の冬日記〜
一方こちら、高円寺家。
ピョン丸「ふぁ〜ぁ、よく寝タ〜!」
スグル「お、おはようピョン丸」
ピョン丸「オハヨ!…アレ?カズミは?」
スグル「鉄道研究会の連中と朝っぱらからSTEPで会議だとさ。きっと盛り上がってるんだろうな…おっ!」
スグルが突然足元の感覚に気付く。
踏みしめてみてわかる確かな感触。いつもとは違う感覚だった。
スグル「おぉい、ピョン丸、ちょっとこっち来てみ?霜柱できてるぞぉ!」
スグル「まぁ説明するより実際にこのあたりを踏んでみたほうが早いな…ちょっと踏んでみ?」
ピョン丸「ドレドレ…アッ!スゲェヤ、なんかパリパリしてるゼ!それになんか冷たいし、不思議ダナァ…」
スグル「これが、霜柱です」
某マジシャンのような口調でスグルは語る。玄関のひさしの下には霜柱がたくさん出来ていた。
ふと先を見ると、白い雪がたくさん積もっている。
スグル「そうだ!ピョン丸、温泉公園行こうぜ!」
ピョン丸「エ?」
スグル「ピョン丸は雪見るのは初めてだろ?」
温泉公園…
ここでスグルとピョン丸は何やら雪を使って大きなものを作っていた。
巨大な雪玉のようなものだが…
スグル「よし、ピョン丸。あとはこのミカンをつければ完成だ」
ピョン丸「えーっと、このミカンをつけて…っと」
スグル・ピョン丸「よっしゃぁ!完成!!」
そう、作っていたのは雪だるまだった。
よく見ると首に青いマフラー、頭には青いハチマキ、手には青いグローブをはめて、
頭の上には耳のようなものがついている。
胸にはドングリを3つ、その右側にミカンが一つ飾られていた。
そう、これはピョン丸の雪だるまだったのだ。
ピョン丸「ふぅ、雪だるま作ったらお腹空いたゼ」
スグル「そうだな…ちょっとSTEPに行くか!今の寒い時期はクリームシチューがとっても美味いんだぜ!」
ピョン丸「ワーイ!行ク行ク!!」
そして舞台はSTEPに戻って…
テツヤ「…お、そろそろ来る頃かな」
ナツミ「来るって何が?」
テツヤ「何がってそりゃぁもちろん」
カンナ「キの100でしょ?」
そのとき、入口の扉が開いた。
スグル「よぉ、カズミ!」
カズミ「お兄ちゃんにピョン丸くん!!」
スグル「鉄研のテツヤにカンナもそろって何やってんだ?カメラなんか構えちゃって」
カンナ「もうすぐラッセル車が来るんですよ!」
テツヤ「土井中電鉄の冬の名物だからな」
カズミ「お兄ちゃんたちは?」
スグル「公園で雪だるま作ってたんだ。腹が減ったからちょっとシチューを食べようと思って」
カズミ「ここってシチューも美味しいからねぇ…ピョン丸くんも一度食べてみなよ」
ピョン丸「エ?…じゃぁオイラとスグルのでクリームシチュー2つ!」
ナツミ「よしっ、それじゃーいっちょ作りますか!ピョン丸はもちろん大盛りだよね?」
ピョン丸「オウ!」
10分後…
ナツミ「…ハイ、クリームシチューお待たせ!美味しいよ!!」
スグル「おぉ、サンキュ!それじゃ、いただきます!」
ピョン丸「イタダキマース!」
ナツミ「……どう?美味しい?」
スグル「このまろやかな甘さがここのクリームシチューの醍醐味だな」
カズミ「カレーも美味いしシチューも美味いから、この時期これからお客さんがたくさん入って来るから大変なんじゃない?」
ナツミ「うん、いつも一人でやってるけど、正直ちょっと大変かも」
スグル「なぁに、そん時はまた俺と料理部が手伝うから、いつでも呼んでくれよ」
ナツミ「うん、ありがと。…ごめんね、いつも手伝ってもらっちゃって」
スグル「困った時はお互い様さ」
テツヤ「おーい、カズミ何やってる!ラッセル来るぞー!!」
カズミ「わーっ!ちょっと待ってよー!」
ピョン丸「なんか向こうは向こうで大変ダナ」
スグル「列車は待っちゃくんねぇからな…」
雪を大きく掻き分けて、吊り掛けモータの音を響かせ、ラッセル車が走りすぎる。
それはある日の冬の情景であった。
と、いうわけで第14話でした。
ひさびさにほのぼのとしたストーリー展開、そして鉄道研究会が登場です。
この寒い時期には、クリームシチューが食べたくなりますよねってことで、
STEPでシチューを出してみました。
カレーだけじゃないんですねぇなんてこと言ったらバールされそうなんで怖いですが。
さてさて次回は、土井中市に春がやってきます。
今度もまたまたただ事じゃすまない予感…?
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